モンゴルブログ。

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「地球イチバン」という番組でモンゴルに行かせて頂きました。

私はドキュメンタリーに詳しくないし、うまく出来るかわからないですとお伝えすると、そのままの佐津川さんに素直に感情を出してほしいですと言って頂きました。
そして生意気ながらに取材させて頂くなら、相手に強要したり無理な事をお願いしたりはしたくないですとお伝えする
と、私たちもその考えです。そこが一緒なら大丈夫。良い旅に出ましょうと言って頂き、それならば私なりにちゃんと向き合ってこようと、お引き受けする事にしました。

日本からは、ディレクター、カメラマン、音声さん、私の4人。
マネージャーや普段一緒に仕事しているスタッフさんも女性もいない。はじめましての人と3週間過ごすという事だけでも不安でした。

正直、こんなショッキングな体験をするなんて思っていませんでした。

私は普段お肉やお魚を食べているし、お布団に入って寝ている。何となくわかってはいても、それがどこからきてそこにあるのか、深くは考えもせず生活していた自分自身に困惑でした。

初めてアイちゃんの家に行った日、遠い日本から来てくれたからアイミ達の為にご馳走するね!と羊を1匹私たちに用意してくれました。
さっきまで生きていたたったひとつの命です。
複雑ですぐにはその状態を理解できませんでした。「カザフの習慣で耳は女の子が食べるんだよ。アイミも食べなさい。」とおじいちゃんが直接切って渡してくれました。
はじめは正直、戸惑いながら口に運びました。でも私も食べ物を頂いて生き繋いでいるのです。わかってはいるけど頭が追いつかない。
感謝して頂く。これでしかない。

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狩りには馬で行きます。車ではいけない急な山道を馬で登って行きました。初めて同行させてもらった日、あまりに険しく急過ぎる断崖絶壁をどんどん登っていきました。下を見ると落ちたら絶対死ぬと思った。今まで生きてきた中で、自分自身の死について初めて感じた私の中では恐ろしい時間でした。

馬も滑りながら登って降ってを繰り返して私たちをてっぺんまで連れていってくれました。
カザフの人たちは馬も食べます。でも自分たちで食べるのではなく、その馬を売り、売ったお金で食べる馬を買うと言っていたのが印象的でした。

ある日、あるお祝いにおじいちゃん達が家畜の牛を屠殺しました。弟のデニスが可愛がっていた牛でした。
「デニスが学校に行っている間に絞めたから、デニスはまだ知らないの。」とお母さん。
「デニスが帰ってきたら何て言うの?」
「売ったっていうよ。」
それを聞いてやっぱり複雑になったけれど、デニスもいつか大人になってわかるでしょう。とお母さん。
難しいなと思いました。

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アイちゃん一家と生活を共にさせてもらい、アイちゃんは平日学校に行っているので、狩りは土日だけ。狩り以外の時は毎日お母さんのお手伝いをしました。
1口しかない暖炉で作るので、ごはんの準備だけでも毎日凄く時間がかかります。乳搾りや家畜のお世話もあるので、本当に1日があっという間。
生活を繰り返す。
生きるという毎日。
便利な日本での生活とは全く違う毎日でした。

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お母さんは何でも「アイミー!手伝ってー!」と言いました。お客さん扱いではなく子供たちと同じように接してくれた事が本当の経験となり私のひとつの救いでした。

言葉が全く通じない中でも、アイちゃんファミリーは私たち日本クルーを受け入れ、毎日笑って一緒に過ごしてくれました。
アイちゃんのお家には家族だけではなく、親戚、友達、色んな人が居ました。みんなが当たり前に1つの大皿からご飯を食べ、1つの部屋で寝ます。親族だけを家族というのではなく、仲間みんなを家族と思っている。私はそんな考え方が大好きだし、その中に入れてもらえた事が嬉しかった。

「アイミのお洋服可愛いから欲しいな」とアイちゃんからの可愛いリクエスト。お母さんや妹のサイカ、デニスにも私服と買い取った衣装はロケ最終日にほとんどもらってもらいました。

「こんなにもらってアイミは寒くないの?」
「お家に他にもお洋服はあるから、日本に帰る分の服だけあれば大丈夫ですよ。」
「もっとあるの?アイミは沢山服を持っているのね。」

私は沢山服を持っていたんだ、、

喜んでくれて、大切にするねととびきり笑顔で言ってくれたファミリー。私たちが帰国した後も毎日大切にしているよと聞き、果たして私はこんなに大切に使えていたのだろうかとまた考えさせてもらうのでした。

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狩りに成功したアイちゃん。初めてイヌワシを飛ばせたアイちゃんの後姿に、私はびっくりしました。
さっきまで一緒にふざけていたまだあどけないアイちゃんとは打って変わって、緊張感を味方にしたような凛々しい姿でした。そして喜んでいるアイちゃんと、もっと喜んでいたお父さんの笑顔を見れてわたしも物凄く嬉しかった。

その時、アイちゃんが初めて獲った大切なキツネの毛皮を私にプレゼントすると言ってくれました。

プレゼントすると言ってくれてからお別れまで3日ありました。私はずっとどうするべきか、考えていました。

生きるという事をモンゴルで実感させてもらったからこそ、自分に本当に必要なものを感謝して大切に使わせてもらう。この考え方がイチバン残りました。
自分たちにとっても貴重な大切な毛皮をプレゼントすると言ってくれたファミリーのお気持ちだけを大切にもらうことにしました。

お別れの日、お気持ちをくれたお礼に、私は手袋をプレゼントしました。
凍傷になりながら頑張っていたアイちゃん。お父さんたちも慣れているとはいえ、工夫を沢山して狩りに行っていました。
なるべく温かくして、辛くなく狩りに行ってほしいです。

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番組では私が言った事、見た事全てが使われている訳ではない。抜粋されて使われている部分もある。
普段は台本がある中で役を演じているので、何もない状態から番組をつくるとはこういうものなのかと、、
正直出来上がった番組をみて、思いました。

でも、それは凄く自分本位な考え方。みんなで一所懸命作ってるのに。
よりシンプルに仕上げることがこの番組にとっての良いことだったのなら、これでよかったんだと思います。

文化の違いという事を考えれば、私は戸惑いの連続でした。
他の文化を受け入れるということは自分なりの考えで向き合うことでした。
自分なりに向き合って、何が一番相手に失礼ではないのか考えた時に、うまく役立てて使うことが出来ないものをお気持ちだからと貰うことは私的には偽善でした。

たったひとつのいのちだからこそ、本当に必要な人たちに大切に使ってもらいたい。その決断は私なりの答えでした。

実際の私の言葉が、通訳を通して伝わるから、難しい言い回しにならないように、なるべく素直にきちんと伝わるように、何度も何度も伝える言葉を考えました。

私の気持ちはちゃんと伝わったと思っています。それは短い間でも一緒に生活して時間を共有させてもらえたからこその空気感とか、表情とか、言葉がわからなくても感じあえることがあったと確信しているから。

モンゴルの思い出というと、圧倒的に、アイちゃんファミリーや他にもお世話になった村の人たち、モンゴルスタッフ、日本スタッフからのあたたかい気持ちがギフトだったと思えるのです。

良き番組をつくろうと、全員が毎日ちゃんと生きていました。

むき出しでさらけ出して向き合ってくれてありがとうと言ってくれたディレクター。なんでも笑い飛ばしてくれたカメラマン。心のサポートもしてくれた音声さん。アイちゃんファミリーとの橋渡しをかって出てくれた先生。
常に私を守って味方でいてくれた通訳ニャムちゃん。優しく受け止めてくれたカザフ通訳ゼレさん。お茶目に励ましてくれたドライバーのマックス、ジョコ、ポロシュ。
沢山お世話をしてくれた村のファミリー、エージ、マーム、ウーヤン。

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みんなで作り上げたこの番組。
私はみんなと3週間過ごせたことを誇りに思います。

良い経験をさせてもらえて良かったですなんて簡単には言えません。
それでも、良かったと思える生き方をこれからしていくつもりです。

ただ、私は最終的にちゃんと向き合ったと自信を持って言えます。

番組を観てくださった方、ありがとうございました。

毎日を大切に生きる。
ただそれだけ。
でも、それが難しい。

でも、ここで生きていく。

もっと強くならなくてはいけないなと今回おもいました。

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アイちゃんが
「お姉ちゃんが出来たみたいで嬉しかった。アイミ来てくれてありがとう。」
と最後に泣きながら言ってくれた言葉と表情、絶対忘れません。

長文、読んでくださってありがとうございました。

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私は今日も精一杯生きています。
愛ある日々を。

佐津川愛美